神山吉光が吠える

<第101回>「海図」なき航海中の玉城沖縄県政➋

2021.07.21



2021年7月20日更新<第101回>


知事
「国と県の対話を粘り強く求める」

 又しても辺野古新基地建設に関わる裁判の判決が、最高裁で出された。
 名護市辺野古の新基地建設に向けた沖縄防衛局のサンゴ特別採捕許可申請を巡り、農相が県に許可するよう是正を指示したのは「国の違法な関与」として県が取り消しを求めた訴訟で、去る七月六日最高裁第3小法廷(林道晴裁判長)は県の上告を棄却する判決を言い渡したのだ。
 裁判官5人のうち2人が反対意見を述べたが、3人の多数意見は農相の 指示を「適法」とした一審福岡高裁那覇支部の判決を支持、これで県の敗訴が確定したのである。


沖縄県に敗訴を
言い渡した最高裁判所
 いわゆるこの裁判は沖縄防衛局が、2019年サンゴ類計約3万9600群体を移植するとして県に採捕許可を申請。標準処理期間を大幅に過ぎても県が判断しないとの理由で農相からは20年2月、移植を許可するよう是正指示が出され、県側は国地方係争処理委員会に審査を申し出たが退けられ、これに対して同年7月に県側は本件を福岡高裁に提訴した。

 ところが、一審福岡高裁那覇支部も今年2月の判決で県が判断しないことは違法と認定し、「申請を許可しないことは裁量権の逸脱で許されない」と判示。農相の是正指示を適法として県側の請求を棄却した。

 ところが県側は、この福岡高裁那覇支部の判決を不服として、最高裁に上告していたが、去る6日最高裁でも県側の請求が棄却され、又も沖縄県側の敗訴が確定したという訳だ。

 そこで玉城知事の言い分だ。

国との対話を求める
玉城デニー知事
玉城知事は「これまでの司法闘争で今回のような反対意見が付いたことは初めてで、これまで県が継続して辺野古新基地建設に反対してきたことの成果だと評価する」とした上で、辺野古を巡る今後の対応に 関しては、「かねて対話による解決の必要性と重要性を繰り返し述べてきた。政府には解決に向け、県との対話に応じるよう粘り強く求める」
 これが玉城知事のコメントの要旨だ。辺野古反対が沖縄の民意ならば、裁判で敗訴した時にはそれ相当に県民の共感を呼ぶようなメッセージがあるのではないか。闇雲に基地反対運動の成果を述べたり、今更に国と対話を求めたり、知事の追い込められた心境が露呈して、どうにも心許無い感じだ。

 それでは県外の読者の為にも、現在までの辺野古新基地問題を巡る国と県の訴訟の概要とその結果を時系列に解かりやすく紹介しておこう。

訴訟概要結果
2015年11月17日
代執行訴訟
国が、県に埋め立て承認取り消しの取り消しを求める 16年3月4日
和解、取り下げ
15年12月25日
抗告訴訟
県が、国土交通相が埋め立て承認、取り消しの効力を止めたのは違法だと主張 16年3月4日
和解、取り下げ
16年2月1日
係争委への不服訴訟
県が、承認取り消しの効力を停止した国交相決定の取り消しを要求 16年3月4日
和解、取り下げ
16年7月22日
違法確認訴訟
国が、埋め立て承認取り消しに対する是正指示に県が従わないのは違法と主張 16年12月20日
県が最高裁で敗訴
17年7月24日
工事差し止め訴訟
県が、岩礁破壊許可を得ずに国が工事を進めるのは違法として、差し止めを求める 19年3月29日
県が最高裁への上告取り取り下げ 、敗訴
19年3月22日
係争委への不服訴訟
県が、埋め立て承認撤回の効力を停止した国交相決定の取り消しを要求 19年4月22日
国交相裁決を受け、 県が取り下げ
19年7月17日
係争委の不服訴訟
県が、埋め立て承認撤回の効力を取り消した国交相決定の取り消しを要求 20年3月26日
最高裁で県敗訴
19年8月7日
抗告訴訟
県が、埋め立て承認撤回の効力を取り消した国交相の裁決は違法と主張 係争中
20年7月22日
係争委への不服訴訟
サンゴの特別採捕を農水相が「許可せよ」とした是正支持は「違法な国の関与」と県が主張 21年7月6日
最高裁で県敗訴

 上記の通り係争中の裁判は、県による埋め立て承認撤回を取り消し国土交通相の決定(裁決)は違法として、県が処分取り消しを求めた抗告訴訟のみとなっている。これは20年11月に那覇地裁で県が敗訴していたが、県が控訴したものだ。この裁判も福岡高裁那覇支部で8月26日に控訴審第1回口頭弁論が予定されている。おそらく本件裁判も玉城知事は時間稼ぎの為に最高裁の判決を仰ぐことにするでしょう。
 それにしても知事は裁判に負ければ負ける程、それに比例して県民の「諦め感」が増幅していくことに気がついてないのではないか。来年の知事選の前哨戦と言われた先の那覇市議選で、辺野古反対を旗印にしている市政与党のオール沖縄勢力が衰退し、辺野古容認の自民党が大きく議席を伸したことは県民に「諦め感」が広がりつつあることの何よりの証左である。
沖縄県民の血税から支出される裁判費用も莫大な金額だ。そろそろ法廷斗争も好い加減にして欲しいものだ。


昨今の国際情勢で高まる「辺野古」の重要性

 この頃、政府は2021年版 防衛白書を発表した。白書では米中両国間の競争が政治、経済、軍事の各分野で顕在化していることを指摘し、軍事活動を活発化させる中国に警戒感を強く打ち出し、その上で「日米同盟の強化がこれまで以上に重要になっていることが特筆で強調されている。

 沖縄石垣市の尖閣諸島については、領海内を航行する中国海警局の活動を「国際法違反」だと明記。わが国の安全保障にとってはもとより、国際社会の安定にとっても重要」だと白書に初めて記述するなど、ここでも中国に対する警戒感を鮮明にした。台湾を巡っては、中国が6年以内に侵攻する可能性があるとしたデービットソン前米インド太平洋軍司令官の米議会公聴会での発言も盛り込んだ。

辺野古工事を推進する
菅義偉内閣総理大臣
 同白書で、岸防衛相は「強権を持って秩序を変えようとするものがあれば断固としてこれに反対していかなければならない」と巻頭言で強調し、中国を念頭に強い抵抗感を示した。又、名護市辺野古の新基地建設に関しては今年4月に辺野古崎南側の埋立区域全域で海底からの高さ3.1㍍に達し、「陸地化が完了」していることを説明、引き続き埋め立て工事を着実に進める考えを明確にしている。
 このように国際情勢が激化すれば、必然的に普天間飛行場の代替施設(辺野古)の重要性が高まるのは、誰の目にも明らかだ。
 わが国は法治国家だ。菅内閣は裁判にも連勝し、激変極まる国際情勢を大義名分に、現行の辺野古工事は変更なく、強力に推進するものと思われる。

 裁判では国が勝訴し、国際情勢も大きく変化しつつある。特に沖縄県を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、日米安全保障条約を容認し、在沖米軍の在続を認めている知事の立場からすれば、いつまでも辺野古反対を叫び続けるには限界があるのではないか。玉城知事は原点に立ち戻って、辺野古問題に関するスタンスを再考する必要があろう。
 玉城知事は5月に新沖縄振計で菅首相との面会を試みたが日程調整を理由に断られ、去る7月15日にも首相との面会を申し出たが官邸側から拒否された。
 残念ながら玉城県政は国からこの程度にしか見られてないのだ。
国際情勢が大きく絡む辺野古問題で今頃に国との対話を求めつづける知事だが、現在の政治環境をどのように突破していくか。今後に問われているのは玉城知事自身の政治的な手腕力量である。

(連載企画、次回につづく)


原則毎月10日定期更新。
但し、筆者の都合により、又は政治と社会情勢によって更新が前後する場合があります。次回(第102回)は8月10日更新の予定です。