神山吉光が吠える

<第102回>「海図」なき航海中の玉城沖縄県政❸

2021.09.10



2021年9月10日更新<第102回>



沖縄県の時間稼ぎで辺野古工事は進行

 辺野古新基地建設問題。沖縄防衛局が県に提出している地盤改良工事の承認問題で、玉城知事は8月中にも「不承認」とするのではないかと言われていたが、県側に新たな心算があるのかどうか、未だに慎重審議だという。
 玉城知事が、地盤改良工事の承認問題をこのように遅らすことによって、県側にどの程度のメリットがあるのか疑問だ。むしろ防衛局による工事の進捗に寄与する結果にはならないのか。

 玉城知事が慎重審議を理由に時間稼ぎをしている間に、沖縄防衛局は去る8月27日、とうとう大浦湾側の「N2」護岸の工事に着手した。
 建設予定周辺には大型サンゴやジョウガサンゴなどが生息しているが、防衛局は専門家委員会の同意を経て移植をせずに工事を進める方針だ。
 新たな護岸の長さは250㍍で、完成後は埋め立て用の土砂の運搬船からの土砂陸揚げに使用し、工事全体の進行を加速させるものとみられる。今回の新たな護岸工事着手は2019年3月の「K8」護岸以来でなんと10カ所目となる。
 確かに玉城知事による地盤改良工事の「不承認」によって、防衛局の工事は一旦は止まるだろうが、しかしそれは一時的であって、国の対処によって、何れは必ず再開される。それが世間の一般的な見方ではないのか、それでも玉城知事は、地盤改良工事の「不承認」で国と抵抗し続けるのだろうか。
 それでは、前任者である故翁長前知事が過去の辺野古裁判でどのような証言をしているか、それを見てみよう。

翁長前知事の証言


翁長雄志前知事

 2016年2月15日、普天間飛行場の移設に伴う辺野古の埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事(当時)を、国が訴えた代執行訴訟の第4回口頭弁論では翁長知事(当時)が出廷し、また、同年2月29日の第5回口頭弁論では稲嶺名護市長(当時)が出廷しそれぞれが証言した。
 当時、この裁判での両氏の証言には県民の耳目も注がれていたので、筆者の脳裏にも強く焼き付いている。
 稲嶺市長は証言台に立ち、瞬く間に「国による辺野古新基地建設の強行は地方自治の原理に反する」また「新基地が出来ると騒音の増加や自然が破壊され、住民生活が悪影響を受ける」などと訴えた。稲嶺市長の証言は予想通りだったが、問題は2月15日の第4回口頭弁論での翁長知事の証人尋問での証言である。
 翁長知事は「埋め立て承認取り消しの適法性を訴え、国による代執行訴訟は地方自治法上の要件を満たしてないと主張し、承認が法的に瑕疵があることにも触れ、また知事が尋問で改めて強調したのは沖縄の基地負担だった。

 「沖縄は沖縄戦で甚大な犠牲を払わされ、収容所に入れられている間に先祖伝来の土地を米軍に強制接収された」という事実についても重ねて強く訴えた。翁長知事の証言は確かに沖縄県民の一定の共感を呼び、例の通り新聞二誌も大きく知事の証言を称えた。

 ところが翁長知事はその一方で、仮に沖縄県が裁判で敗訴した場合の対応について問われ、知事は「行政の長であり、裁判所の判断に従う。最高裁などで確定した場合はその結果に従う。」と証言している。国側の尋問だけでなく県側の尋問にも翁長知事は同じように証言した。
 裁判の結果に従う事は当然だが、しかし、翁長知事はあれだけ辺野古反対が沖縄の民意だと言い張っており、翁長知事に「辺野古阻止」という固い信念と裁判に勝訴するという強い決意があれば、辺野古反対の民意で当選した知事があそこまで踏み込んで証言する必要はなかったのではないかと筆者は思った。しかし、翁長氏はそうではなく「行政の長であり、裁判所の判断に従う。最高裁などで確定した場合はその結果に従う。」と県側の尋問にまで同じように証言したのである。この部分の証言は大変重要だと思うが、翁長県政のコマーシャルペーパーと言われた沖縄二紙は、見出しを立ててまでその事実を報じなかった。この裁判での証言はどうしても忘れることは出来ない、その後の経過と現実に照して実に不可解な証言である。
 周知、沖縄県は2016年12月20日、最高裁の「違法確認訴訟」で敗訴が確定したにも拘わらず、その後も裁判を起こし連敗している。

(次回「第103回」につづく)


原則毎月10日定期更新。
但し、筆者の都合により、又は政治と社会情勢によって更新が前後する場合があります。次回(第103回)は10月10日更新の予定です。