神山吉光が吠える

<第104回>「海図」なき航海中の玉城沖縄県政❺

2021.11.18



2021年10月19日更新<第104回>

 

はじめに

 衆議院総選挙はあのような形で終わったが、沖縄では新年早々に名護市や南城市の市長選挙をはじめ、沖縄市、那覇市の各市長選と参議院選そして9月には知事選が行われる。
 誰々が立候補するのか、いずれの選挙でも有権者は候補者の人柄と政治理念、そして各候補者の選挙公約には大いに関心がある。
 特に有権者との約束(契約)である選挙公約は、投票の際の判断に大きな比重を占める。そして当選後も公約の達成状況が厳しく問われる。
 従って候補者は選挙公約を発表する前に公約そのものが、自らの政治力量に照らして、本当にその公約が当選後に実行可能なのかどうか、慎重に検討する必要がある。
そうではなく、当選への支持拡大と集票がために実行不可能な政策をやたらに公約した場合は有権者を愚弄したことになり、ある種の背信行為とも言えよう。


酷過ぎる玉城知事の公約達成率

 さて、「海図」なき航海中の玉城丸が出港して3年が過ぎ残任期間は1年足らずになった。では、いよいよ残任期間が1年足らずになった玉城知事の選挙公約は一体どうなっているのだろうか。
 玉城知事は9月21日の県議会代表質問で、就任3年間で公約の291件すべてに取り組んだものの、これまでに達成したのは5件であることを明らかにした。達成率は約1.7%となる。「辺野古新基地建設反対」など未だ達成していない「推進中」の公約が280件、調査や検討、要請段階の「着手」にとどまったのは6件だと説明した。
 県の説明によると、達成実現は、❶「那覇空港第二滑走路の早期増設」➋「カジノ誘致反対」❸「就学前教育の充実」、❹「本島北部や西表島などの世界自然遺産登録の早期実現」❺「琉球歴史文化の日の制定」だった。
 着手にとどまったのは、❶「地域連携を強化した県立高校の存続」のほか、➋「世界ウチナーンチュネットワークの有効活用」、❸「フィリピン、テニアン、サイパンとの人事交流や姉妹都市締結」、❹「消防防災ヘリの導入」、❺「公立夜間中学の設置」、❻「住民合意がない自衛隊配備は認めない」だった。これが残任期間1年を残した玉城知事の現在の公約の達成状況である。
とんでもない公約の達成状況である。玉城知事はこの3年間いったい何をしていたのか。公約の達成率を年割にすると3年間では75%の公約が達成されてなければならないが、1.7%とは余りにも酷過ぎる。
 ちなみに2期8年を全うした稲嶺恵一知事と仲井真弘多知事は4年単位の公約でもその達成率は90%を超えていた。
 両氏は有権者との約束を果たしたのである。玉城知事は残り一年足らずの任期で果して98%の公約が実現出来るのだろうか、仮に玉城知事が任期満了時に公約の達成率が50%を割るようであれば、玉城知事は重大な公約違反を犯したことになる。そうであれば「オール沖縄」勢力にも大いに責任がある。
 それでもやり残した仕事があるから再び立候補するとは言えないだろう。有権者は今後の知事の動向に厳しく目を張るべきである。

(次回第6回に続く)



衆議院選と憲法改正問題

 「海図」なき航海中の沖縄玉城丸が出港して初の衆院総選挙が行われた。
国政では自民、公明両党と憲法改正に前向きな日本維新の会、国民民主党などの改憲勢力が衆院選で352議席となり、公示前と同じく今回も改憲勢力が衆院の4分の3を占めた。くしくも投開票の三日後には日本国憲法が公布されて75年を迎えた。

75年前に各大臣の署名で公布された日本国憲法(末尾)


 改憲勢力は、衆参両院で改憲の国会発議に必要な3分の2を維持しており、岸田政権で改憲論議が本格的に進むのかが注目される。
 自公の与党と維新、国民の両党に改憲に前向きな無所属議員などを加えた勢力は衆院選公示前にも338議席を確保し、総定数3分の2(310)議席を上回っていたが、今回の衆院選で改憲勢力が増えたのは、何と言っても維新が公示前の11議席から一挙に41議席までに伸ばしたことが大きいだろう。
 岸田首相(自民党総裁)は安倍元首相の就任時の勢いと同じく、開票日翌日の記者会見で「党是である憲法改正に向け、精力的に取り組む」と強い意欲を示し、首相は自衛隊の根拠規定明記や緊急事態条項の創設など4項目の自民党改正案について、2024年9月末までの党総裁任期中の実現を目指す考えを表明した。
 筆者が思うに伝統ある宏池会のハト派的なイメージとは少し異なるが、岸田首相の意気込みを大いに評価したいと思う。
 改憲は、衆参両院の3分の2以上の賛成で国会が発議した後、国民投票で過半数の賛成を得る必要がある。
 先の通常国会では、改憲時の国民投票の利便性を高めるための改正国民投票法が国会提出から3年を経てようやく6月に成立した。従って、国民投票に向けた環境整備は進んだが、しかし具体的な改憲項目を巡っては与党の自公間でも多少の隔たりがある。
 公明党は、「加憲」の立場で自衛隊明記や緊急事態条項の創設には消極的な姿勢だが、党内には、新型コロナウイルスの再拡大などに備えて国会機能を強化すべきだとの意見もある。その一方で、来年夏には参議院選を控えており、「政権に体力を使う改憲よりも、まずは参院選での勝利を目指すべきだ」との声もあり、現在でも自民党と連立を組む公明党がしっかりと纏っていないことが筆者には気になる。

 このことは読売新聞の調査でも如実に現われている。読売新聞社が実施した衆院選立候補者アンケートで当選した455人(当選者全体の98%)の回答を分析したところ、憲法改正への賛成は全体の79%に上った。公明党で改憲に慎重な姿勢がみられ、調査でも連立を組む自民党との溝が目立った。一方、野党では、日本維新の会と国民民主党で改憲に向けた積極的な姿勢が際立った。
 改憲への賛否を政党別で見ると、自民党は当選者の97%が賛成したが、連立を組む公明では賛成が約6割にとどまり、3割強は反対した。公明は、安倍政権下の2017年衆院選でのアンケートでは、当選者の9割か改憲に賛成していたが、今回は慎重な姿勢が目立っている。与党が一丸となる為に岸田首相は指道力を発揮して欲しいものだ。
 ちなみに野党では維新と国民が全員改憲に賛成した。立憲民主党は反対(55%)が賛成(36%)を上回り、共産党は全員が反対だった。


改憲議論放棄は政治の怠慢
 戦後75年を越えた日本社会は大きく変化した。ところが日本の憲法は公布されて75年を迎えたが今日まで一度も改正されない。外国では最近20年間だけでもフランス10回、ドイツ11回、スイスでは23回も憲法を改正している。
また、衆院法制局の調べによると、世界で成文の憲法を持つ180カ国の中で日本の憲法は14番目に古く、日本より古い憲法を持つ国も全て改正を1回以上は経験しているという。
 激動する世界情勢の中で、制定以来一度も改正されていない日本の憲法は実に古典的であり、世界中でも稀有な存在と言える。
 時代の変化に伴い国の安全保障はもとより、大規模災害に備える緊急事態条項の創設、そして、環境権やプライバシー保護の問題など、日常的にも現憲法と現実との様々な乖離が目立っているのは誰の目にも明らかだ。それが今の我が国の実状である。
 戦後最大の政治課題とされてきた憲法改正問題。国会は2回の総選挙で改憲勢力が改憲発議可能な議席を確保しており千載一遇の環境の中でいよいよその「改正案」の 作成作業を急ぐべきである。
 自公を中心とする改憲勢力が、改憲発議に必要な議員を確保した現在の政治状況の中で、それでも国会が改憲論議を放棄すれば政治の重大な怠慢と言えよう。


原則毎月10日定期更新。
但し、筆者の都合により、又は政治と社会情勢によって更新が前後する場合があります。どうぞご了承ください。