神山吉光が吠える

<第107号>北方領土問題とウクライナ情勢

2022.02.10



2022年2月10日(木)更新<第107号>

 

 ウクライナ情勢が日増しに緊迫する中で、2月7日わが国は42回目の「北方領土の日」を迎えた。国民の北方領土問題への理解と関心を深めるために制定された「北方領土の日」は、日本とロシアの国境が択捉島とウルップ島の間にあることを定めた「日露通好条約」(1855年)が調印された日であり、北方四島が正に日本の領土として国際的にも認知された歴史的な日である。
 ところが、わが国固有の領土である択捉島、国後島、歯舞群島、色丹島が旧ソ連によって不法占拠され、今なおその状態が続いている。
 戦前には約1万7000人が暮らした日本固有の領土であるにもかかわらず、第2次世界大戦の終結直前、当時まだ有効だった日ソ中立条約を破って侵攻したソ連に不法占拠され、77年間も不正常な状態が続いているのだ。



1945年9月5日、ソ連に不法占領された地方四島


 日本の敗戦が濃厚だった第2次世界大戦末期の1945年8月9日、ソ連は圧倒的な兵力を投入して、日本がポツダム宣言を受諾し終戦を迎えた8月15日以降も侵攻を続け、歯舞・色丹を含む北方領土全域が占領されたのは、日本が降伏文書に調印した9月2日よりも後の9月5日だった。

 それだけではない。ソ連は旧日本軍人や民間人ら約60万人を国際法に違反してシベリアに抑留し、飢餓や極寒の中での過酷な強制労働に従事させて約6万人を死に至らしめた。
 その後、ゴルバチョフ時代からエリツィン時代にかけて、ロシアはシベリア抑留の過ちを認め、日本国民に謝罪し、北方領土問題についても、1993年の東京宣言で北方四島の島名を列挙して「法と正義の原則」に基づき解決するという明確な交渉指針を示したのではないのか。


 ところがプーチン大統領は時計の針を戻すかのように、「北方四島に対するロシアの主権は第2次世界大戦の結果」と強弁し、いよいよプーチン政権が2020年に改正した憲法には「領土割譲の禁止」を明記、北方領土の返還が困難なことを改めて明確にしているのだ。


ロシアのプーチン大統領

そして、北方領土で軍事演習を繰り返すばかりか、なんと、昨年7月にはミシュスチン首相に択捉島訪問を強行させるなど日本に対して高圧的な姿勢に転じている。このような不当な歴史的事実を不問に付し、ロシアが北方領土を不法占拠したままの状態で日露間で平和条約を締結することは不条理であり、とてもあり得ないだろう。


 ウクライナ情勢を見てもロシアの不当な手法は明らかだ。ロシアとウクライナ両国は1997年に締結した基本条約「友好協力条約」で領土保全や国境不可侵などを取り決めたが、ロシアはこれを無視し2014年、ウクライナのクリミアを併合する暴挙に出た。更にウクライナ東部の親露独立派を支援し、ロシア下院ではその実効支配地域を国家承認する動きも進んでいるという。
ロシアは現在、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を阻止するため、10万人もの兵力をウクライナ国境付近に展開し威圧しており、侵攻する可能性が日増しに高まっている。
 そんな最中で去る7日、ロシアのプーチン大統領とフランスのマクロン大統領が緊迫するウクライナ情勢を巡りモスクワで会談、会談後の共同記者会見でプーチン大統領は、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟してクリミアの武力奪回を図れば、欧州諸国は「自動的にロシアとの軍事紛争に巻き込まれる」と警告した。そして驚くべき事は「ロシアは核保有国だ。その戦争に勝者はいない」とも述べ、プーチン大統領が核兵器使用の可能性も示唆していることだ。今、ウクライナ問題はいよいよ関係国を巻き込んだ大戦前夜と言えるだろう。
 わが国も北方四島の不法占領と同じように、ロシアに領土を奪われたウクライナを支援するとともに、岸田内閣はロシアに対し「法の支配」に基づく国際秩序を守るよう、米国と共に制裁強化を急ぐべきである。(2月9日 記)

原則毎月10日定期更新。次回は3月10日(木)に更新予定。
但し、筆者の都合により、又は政治と社会情勢によって更新が前後する場合があります。どうぞご了承ください。