神山吉光が吠える

<第112号>第6次沖縄振興計画 これでいいのか沖縄県の「県民所得展望数値」

2022.12.12


2022年12月15日(金)更新
<第112号>

 

「知事の政策判断の甘さを懸念」

 今秋の沖縄県知事選挙は激戦の結果、玉城デニー知事が再選を果した。
だが、忘れてならないのは玉城氏の前期4年間における選挙公約の達成率である。
 繰り返すが、玉城知事は昨年の県議会代表質問の答弁でも、「就任3年間で公約の291件全てに取り組んだものの、これまでに達成したのは5件である」ことを自ら明らかにした。公約の達成率は昨年段階でなんと約1.7%だ。
 また玉城知事は重点公約である「辺野古新基地建設反対」など未だ達成してない公約が280件、調査や検討、要請段階にとどまったのは6件あることも自ら説明した。 

 その後、玉城氏はいよいよ任期最終年に当る今年2月の議会でも、野党自民党側から公約の達成状況を厳しく問われ、結局「沖縄観光の高度化を図る為の観光基金の創設」と「少人数学級を中学三年まで拡大」、「那覇市内特別支援学校の設置」など3件のみが達成されていることが明らかになった。 従って玉城知事の任期4年間での公約の達成率はたったの2.7%だ。実に前代未聞の公約達成率である。
 そのことは、しっかりとした実現の見通しも立たないままに、実現不可能な政策をひたすらと選挙に当選するが為の公約として羅列したことに帰結するのではないのか。玉城氏の政治姿勢には大いに問題がある。
 翻って、玉城知事のこのような政策実現に対する見通しの甘さが、沖縄県の政策立案にも影を落としてはいないか、あえて検証する必要があろう。
 と言うのは先に沖縄県が公表した第6次沖縄振興計画の中の「県民所得」の展望数値の問題だ。

今後10年間で
県民所得「77万円増」は本当に妥当な展望なのか?

 <沖縄県は令和4年度から令和13年度までの10年間を計画期間とする第6次沖縄振興計画をスタートさせたが、なんとその間に沖縄県民1人当たり所得が77万円増というまったく実現不可能と思われる過大な数値目標となっている。
 県の振興計画は、数値目標を掲げた長期経済見通しになっているだけに、県内企業の中長期の経営計画の指針にもなっており、県経済全般に及ぼす影響も極めて大きいといわざるを得ない。ちなみに第5次沖縄振興計画の最終年次の令和2年度の県民1人当たり所得を271万円と掲げて取り組んだが、新型コロナウイルスの影響等もあり、令和2年度の沖縄県の予測値では214万円、目標に対し57万円という未達成となっており、従って一国二制度といった大胆な制度改革が無い限り、県民所得水準の大幅増はまったく期待出来ないと言うのが実情である。

 そこで、過去の県民1人当たりの所得について触れておきたい。
 平成7年度の県民1人当たりの所得は203万3千円であったが、令和2年度は県民1人当たりの所得が214万円という。26年間にわずか10万7千円しか増加していないのにもかかわらず、第6次沖縄振興計画の令和13年度までの10年間に77万円増加するという沖縄県の数値目標は過大であり、それを決定した玉城知事は「経済オンチ」といわざるを得ない。
 しかも、沖縄県が第6次沖縄振興計画を策定した時期は、新型コロナウイルスの感染者が人口10万人当たりにすると全国一の最悪の事態を想起していた時期であり、経済発展に向けての展望が全く見通せない時期に、県民所得を飛躍的に発展させるような目玉プロジェクトを明確に打ち出すこともなく、単に77万円も増加するという根拠の乏しい振興計画では、今後の沖縄経済の指針に暗雲が立ち込める事態を想起せざるを得ない。この77万円増という実現不可能と思われる計画目標に対し、去った6月の沖縄県議会の定例議会や9月の定例議会においても野党側自民党からもついに厳しい追及もなく、また沖縄経済界から沖縄県の杜撰ともいえる今回の沖縄振興計画に対する異論も聞こえない有様では、沖縄経済の将来が懸念される。
 一般的に企業は経済計画を策定するに当っては、国際機関やシンクタンク等の世界の経済見通しや、国内経済動向を踏まえ、県の振興計画を指針として採用するケースが多いと思われる。従って今回の第6次振興計画は実現不可能な過大な数値目標となっていることから、まったく信頼性が失墜しているのではないかと判断するものである。
 今年度からスタートしたばかりの第6次沖縄振興計画の県民1人当たりの所得目標の大幅な下方修正を中心に、県議会の各政党間の議論や経済界または一般県民の意見を振興計画に反映させるといった県民世論を喚起することにより、実効性のある堅実な県経済の発展を期することが求められている。>

 これは長年にわたり沖縄の経済振興を研究している仲里嘉彦氏(元万国津梁機構理事長)が筆者に寄せた書簡の一部だが、県民所得に関しては沖縄県のHP公式ガイドでも確認することができる。
 筆者も展望数値を見ての直感的な印象としては概ね仲里氏と同感だ。
従って、10年後の県民所得の「展望値」の部分には現在のところ疑問符を印しているところである。

 10年後の令和13年度には、沖縄県の県民所得が77万円も増加して県民1人当り291万円にもなるという。その数値を単純計算すれば年平均7万7千円の増加となり、玉城知事の任期満了時の令和8年度には県民1人当りの所得が30万8千円増加して、224万8千円となる。選挙公約と同じく甘いのではないのか。歴代知事にはこのような高い成長率はなかったと記憶している。
 いずれにしても、沖縄振興計画の展望値の達成率は当該知事の実績を推し測る上から大きな意味合いがあり、そこで玉城知事に問いたい。過去26年間にわずか10万7千円しか増加していない沖縄県の県民所得が、どうして今後10年間に77万円も大幅に増加して291万円になるのか、その積算根拠及び目標達成の為の行政側の施策や見通しに関して、さしずめ知事部局の丁寧な説明を求めたいと思う。知事部局からは「解答します」との確約を得ているので、広く県民の理解を得るために説明文が届き次第に速やかに公開します。

<完>

巷間に話題、神山吉光の新著展望

『日本から

沖縄列島

消える日』

~台湾有事沖縄瓦解前兆

国内外情勢翻弄される宿命島 沖縄~

神山吉光 編著

迫り来る中国軍侵攻の足音

 我が国は本年9月に中国との国交正常化50周年を迎え、2025年(令和7年)8月には戦後80年の節目を迎えます。その先、日本そして沖縄は何処へ向うのだろうか。

中国軍を激励する習近平国家主席

「2035年高速道路から台湾へ行こう」この標語は、中国で放映されたテレビコマーシャルです。習近平国家主席は2035年までには悲願の台湾併合を実現し、大陸から小島を経て台湾まで架橋することを国民に強く煽っています。
 いよいよ中国が台湾併合に成功すれば、その次に遠からず懸念されるのは、中国によるいわゆる沖縄侵食です。その予兆として、あの習近平国家主席は「2049年までに中国を世界一の軍事大国にする」と、自ら豪語しており、また、近年巷間では、在日中国人や留学生、または観光や商取引を名目にした旅行者による、対日工作と思われる不信な行動が全国的にいとまなく噂されています。従って、なかんずく近い将来には「中国から台湾そして、尖閣諸島を経由して沖縄へ行こう」というテレビコマーシャルが放送されるかもしれません。(詳細省略)

 最近の日本世論調査会の世論調査によると、日本が今後戦争する可能性があるとした人は、「大いに」と「ある程度」を合わせて計48%に上がったが、1昨年が計32%、昨年は計41%と増加し、2年前から16ポイント上昇しています。また、最も可能性が高いと思う戦争の相手国は中国が38%で最も多く、中国が10年以内に台湾に軍事侵攻する可能性があるとした回答でも、「大いに」と「ある程度」を合わせて計75%に上がっています。
 ロシアによるウクライナ侵攻で現実に繰り広げられる戦争の光景などから、この世論調査でも国民の間で中国による日本<沖縄・尖閣諸島>への侵略すなわち、戦争への危機感が一層高まっていることがうかがえます。

大臣就任早々に沖縄・与那国島を視察した浜田靖一防衛大臣
(左から4人目)

 何よりも我々が心しなければならないのは、中国の国防予算と我が国と同盟国にあるアメリカの防衛姿勢です。近年、中国の国防費は増加の一途をたどり、2022年にはなんと日本の国防費の5倍を越え、約30兆円にまで膨れ上がっています。
 翻って、国際的にやや影響力が弱体化の傾向にあると言われる同盟国アメリカが、果して日本有事とりわけ沖縄・尖閣有事の際には本当に自国と同等に我が国を守ってくれるのだろうか。大いに議論の余地があります。
 昨今のウクライナ紛争は、日本とりわけ沖縄にとって決して対岸の火事ではありません。数年前から沖縄でも対日工作と思われる不穏な足音がかすかに聞こえはじめています。
 それは習近平国家主席による第一列島線攻略への序章であり、今後は大きな足音を立てて、我が国に迫ってくる可能性があります。かくなる上は国防策はもとより我々沖縄県民自身が率先して郷土沖縄を守らなければなりません。
 本書「日本から沖縄列島が消える日」では、2025年8月(終戦80周年)の出版を目指して、専門家からなる強力な執筆陣がプロジェクトチームを組んで、日本を取り巻く国際情勢を正確に探知展望し、細かく解き明かして、広く国民に迫り来る中国軍侵攻の悪夢をしたたかに示唆し、強く警鳴を鳴らします。神山吉光の編著プロデュースです。どうぞ出版の暁にご注目ご期待ください。
(2025年8月出版。判型、頁、定価は23年10月、目次概要は24年10月発表予定。)

♬「沖縄を返せ」から    
  「沖縄を守ろう」へ

固き土を破りて   
民族の怒りに焼ける島 沖縄よ 
我らとわれらの祖先が
血と汗をもて守り育てた 沖縄よ
我らは叫ぶ沖縄は  
我らの物だ 沖縄は
沖縄を守れ 沖縄を守ろう

<完>

平素からご愛読いただきありがとうございます。
 さて、誠に恐縮でございますが、筆者に大型企画本の前段調査などが重なっております故に、当分の間は、定期更新(毎月10日)から随時更新に移行させていただきます。どうぞ引き続きご愛読賜りますようお願いいたします。