神山吉光が吠える

<第23回> 沖縄県知事選挙 告示日に見た選挙結果の展望

2014.10.30

解り安く、面白く、パンチの効いた時事評論


2014年10月30日更新〈第23回〉

 

中央政界では連日のように閣僚達による「政治と金」の問題が次々と発覚し、国会ではあのような形で非生産的な議論ばかりが交わされているが、沖縄県では全国的にも注目されている知事選挙が告示され、告示前から天下分け目の大決戦が展開されている。


 では、選挙結果を展望する前に県外読者のためにも敢えて今回の立候補者とその候補者達が最大の争点とされる普天間基地の移設問題に対して、どのように対応しようとしているのかをかいつまんで紹介しておこう。
 先ず現職で三選を目指す仲井眞弘多(75才)だが、自民党の推薦で普天間基地移設問題では「推進」の立場だ。仲井眞は昨年末に辺野古埋め立てを承認した後も「県外移設公約は変えていない」と説明し、一方、「普天間の危険性除去のため政府の作業が進んでいる。現実的な解決方向に進んでいる」などと述べ、移設推進の姿勢を強めている。
 前回の知事選では県外移設を公約に勝利したが、昨年末に普天間の5年以内の運用停止への取り組みを約束した安倍政権を評価し、方針を事実上転換した。現在は安倍政権と歩調を合わせ、「危険性除去」を前面に移設計画を支持する立場を明確にしている。

 次に前那覇市長の翁長雄志氏(64才)。翁長氏は社民・社大・共産など県政野党と保守系那覇市議の推薦を得て、普天間問題では仲井眞氏が承認した辺野古移設に「反対」の立場だ。

 
 翁長氏は「埋め立て承認は絶対に許さない。辺野古に新基地は造らせない」ということで辺野古移設反対を一貫して強調している。
 1999年に自民党県連幹事長として県議会の辺野古移設推進決議を主導するなど、かつては移設容認だったが県内移設反対の世論を背景に徐々に姿勢を変化させた。
 ただ県知事選では埋め立て承認の「撤回」を明確にしておらず、移設をどう止めるかは未知数との指摘もある。


 次に前そうぞうの代表で無所属で立候補した元郵政民営化担当相の下地幹郎(53才)だ。

 下地氏は普天間問題で持論の嘉手納統合案を封印し、移設の是非を「県民投票で決着させる」と強調している。当選後は半年以内に県民投票を実施し、その結果を日米両政府に突き付けると意気込む。2012年に郵政民営化担当相で入閣した際は辺野古移設を容認し、代表を務めていた政党そうぞうが昨年春に大阪維新の会との政策協定を結ぶ際には「辺野古推進」にかじを切った。過去の変遷が非難されるが、「沖縄の戦後を今回の知事選で終わらせる」と力説している。




 

そして、次に前民主党県連代表の喜納昌吉氏(66才)。無所属の喜納氏は立候補者の中で唯一人埋め立て承認の「撤回」を訴えている。民主党県連代表として当初、翁長雄志氏支援も検討したが、翁長氏が「撤回」を明言しなかったとして不支持を決定。「民意は承認撤回だ。それに応える政治家が出てこないといけない」と立候補に踏み切った。

立候補しているのは以上の四氏である。

今の時点では翁長氏が当確圏に最接近

それでは告示日段階の情勢はどうなのかと問われれば、翁長氏が当確ではなく、当確圏内に最接近の位置にあるものの、一方の仲井眞氏が物凄い速度で追い縮めており、投票日までには逆転の可能性も決して否定できないということである。
 ただ確信ではなく、私の五感によると最終的にはそのまま翁長氏が当選圏内に流れ込むのではないかと思われる。

 このように事実上は仲井眞氏と翁長氏の当選争いということになるが、他方の下地氏の場合は仮に8万票前後を得票すれば一定の政治的な地歩固めが成功したことになる。従って次は立派な知事候補者になれる。彼は沖縄政界でもそれ相当の発言力を発揮するであろう。
 また、喜納氏の場合は現時点での評価は難しく、ある程度の得票がなければ辺野古承認の取り消し、撤回を最大のスローガンとして立候補した大義も失うことになる。以上が私の五感によるあくまでも告示日段階で展望した選挙情勢である。