神山吉光が吠える

<第100回>辺野古新基地建設問題 「海図」なき航海中の玉城沖縄県政

2021.06.10



2021年6月10日更新<第100回>

莫大な辺野古裁判費用
 「普天間飛行場代替移設問題」。いわゆる辺野古新基地建設問題で県と国はこれまで幾度となく訴訟を発展している。
最初の訴訟は2015年11月に国が提起した。当時の翁長雄志知事が前任の仲井真弘多氏による埋め立て承認を取り消したことを受け、国が福岡高裁那覇支部に代執行訴訟を起こした。同訴訟は16年3月、国が訴えを取り下げ、工事を中断して問題を再協議するなどの内容で両者が和解した。この間に県が二つの訴訟を提起していたが、和解で取り下げた。



 しかし、和解協議が決裂し約4ヶ月後には国が再び承認取り消しを巡って、県の違法確認訴訟を高裁那覇支部に提起し県が敗訴した。その後、最高裁で県の敗訴が確定した。県は沖縄防衛局による岩礁破壊工事の差し止めを求める訴訟も提起したが、一審、二審ともに県が敗訴し、県は19年3月、上告を取り下げ、敗訴が確定した。
 現在までに国と県の間では9回の訴訟が行われたが、審理中の二つと和解を除いては全て県が敗訴し、県が裁判に投じた費用はなんと5月31日現在で2億円にも達しつつあるのだ。(正確には193,118,152円。その中から約1億5千7百万円が弁護士費用として、6人の弁護士に支払われている。)

 運命と激動の経緯
 そもそも、米軍普天間飛行場の返還問題は1995年の米兵による少女暴行事件が原点だ。当時、沖縄県内では反米の機運が高まり96年に橋本龍太郎首相とモンデール駐日米大使の間で返還合意が実現したが、代替施設の滑走路を陸上にするか海上にするかなどを巡って調整が難航し、政府と名護市がV字型滑走路を建設する現在の計画で合意したのは2006年4月だった。

 返還合意から10年かけてまとめ上げた計画だったが、「最低でも県外移設」という公約を掲げて09年9月に発足した民主党鳩山内閣により、返還合意はいったん白紙となった。
 ところが、あの鳩山内閣は「県外移設」の公約を掲げたものの新たな候補地を見つけられず、結局、自民党政権時代の辺野古案に回帰してしまった。
 あれから5年余り、沖縄では普天間飛行場移設問題が右往左往する中で、14年12月知事選では保革相乗りの「オール沖縄」が台頭し、移設反対を掲げた翁長雄志氏が当選、しかし、翁長氏は移設反対を「県政の柱」として実に華々しく登場はしたものの志半ばで他界し、その後継に玉城デニー知事を誕生させた。このように、なかんずく辺野古問題は実に運命の経緯とも言える。

(詳細省略)

 そして現在、辺野古問題は移設予定区域(南側)に当たる約4分の1が「陸地化」され、現在は知事が北側にある軟弱地帯の地盤改良工事を「承認」するか「不承認」とするかが最大の関心事となっている。


時間稼ぎに終始する玉城知事
 国は中国の軍事的脅威が高まったことで、沖縄に駐留する米軍の存在が中国側の抑止力として否応なく重要になっていることから、菅義偉内閣は軟弱地帯の地盤改良工事が若し承認されなければ、訴訟も含めて対抗し工事を進める方針だという。
 巷間に伝わっているように、裁判で時間稼ぎしか選択肢がない玉城知事は、国のこうした方針を見越して、おそらく地盤改良工事は間違いなく「不承認」とするだろう。
 そうであれば、八方塞がりで出口の見えない、追い込まれた「行政行為」だと言えよう。

 

ここにきて、知事を支えてきた保革相乗りの「オール沖縄」内では、革新色を強める知事に保守層が反発し、県議会でも与党議席を滅らし、玉城知事の地元うるま市の市長選挙でも敗北するなど、玉城知事の求心力に衰えが目立っている。
 玉城知事が本当に地盤改良工事を「不承認」とするならば、ではこれから先どうするのか、従来のように辺野古反対の民意を訴えるだけでなく、玉城氏は知恵を絞って、真に行き詰った状況を克服する打開策を不承認と同時に打ち出してほしいものだ。そうでなければ、唯一辺野古反対で「オール沖縄」に合流した保守系勢力から見放されるどころか、革新系の支持も失いかねない状況に陥いることを玉城知事は悟るべきである。
 だが、残念ながら玉城知事には裁判を重ねる以外に、今後を展望した有効な対抗策や国と対峙するだけの気迫・政治力があるとは思えない。今、沖縄県民は辺野古問題で「海図」を持たない船長の船に乗っているようなものだ。
 玉城デニー知事は2018年9月30日の県知事選に故翁長雄志前知事の後継者として立候補し、過去最多得票で当選を果たしたものの、指導力や決断力、そして、構想力が問われる難題が、息つく間もなく次から次へと押し寄せ、玉城県政は辺野古問題に限らず否応なく試練に立たされている。

(連載企画・次回につづく)


原則毎月10日定期更新。
但し、筆者の都合により、又は社会情勢によって更新が前後する場合があります。次回(第101回)は7月10日更新の予定です。